どうも!KENT(@kentworld2 )です!
今回は、スプラトゥーンはなぜ基本無料にしないのかを解説していきます。
「スプラトゥーン」と言えばインクを撃ち合うアクションシューティングで、わかりやすいゲームデザインや可愛いらしいキャラクターが人気を博していますよね?
特にインターネット上での人気が凄まじく、公式Twitterのリツイート数は数時間で数万。
公式動画は初日で100万再生を突破するのが当たり前の状況となっています。
そんな「スプラトゥーン」ですが、たまにこんな意見を耳にします。
確かに「スプラトゥーン」は6,000円以上をまずは支払わないと遊べませんので、基本プレイを無料にして課金で収益を上げるという選択肢もアリだとは思いますが・・・
任天堂の思想からすると当面はないんじゃないかと思います。
ここからは基本プレイ無料ゲームの歴史を語っていき、「スプラトゥーン」はなぜ基本無料にしないのかを語っていきますので、ぜひ、最後までご覧ください。
目次
基本無料が当たり前の時代に
まずは冒頭で触れたコメントについて掘り下げていきます。
このコメントを見て「何を言っているんだ」というご意見を持たれる方もいるとは思いますが、昨今の対戦ゲーム界隈を見ていると、ぼくは不思議ではないと思っています。
というのも、今の対戦ゲームは基本無料で展開するのが当たり前になっているからです。
かつての家庭用ゲームは買い切り型が主流で、ジャンルを問わず、一度お金を払ったら全ての要素が遊べるようになっていました。
しかし、2010年代に入るとゲームソフトやコンテンツをダウンロード形式で販売する流れが加速。
同時に販売方式の多様化が始まり、様々な形でゲームコンテンツが販売されるようになります。
購入したゲームでも追加料金を支払うことで新しいステージやキャラクターが追加されるようになったり、基本プレイは無料だけど、課金をすることで快適にゲームを攻略できるようになったり。
特に基本無料のゲームが業界に与えた影響は凄まじく、スマートフォン向けのゲームに至っては大半のタイトルが基本プレイ無料に。
買い切り型の文化が強く根付いている家庭用ゲーム市場にしても基本プレイ無料の波が押し寄せており、プレイヤー人口を確保しないといけない、オンライン対戦ゲームに関しては大半のタイトルが基本プレイ無料になりました。
発端となったのが「フォートナイト」の大ヒットです。
同作はEpic Gamesが販売・配信するアクションシューティングゲームで、オンラインでの協力・対戦を主としています。
そんな「フォートナイト」ですが、基本プレイ無料で展開した「バトルロイヤル」モードが大ブレイク。
最大100人のプレイヤーがサバイバルを繰り広げていくゲームシステム、建築によって生まれた戦略性などが人気を博しました。
その勢いは留まることを知らず、スマホやSwitchなどでも展開されるようになるとユーザー層が子供にも広がっていき、社会現象と言えるほどの規模にまで膨らんでいます。
その結果、オンライン対戦ゲームは基本プレイ無料で売り出すのが主流となり、様々なタイトルが「フォートナイト バトルロイヤル」に追随したビジネスモデルを展開するようになりました。
エーペックスレジェンズ、コール オブ デューティ ウォーゾーン。
当初は買い切り型で販売されていた「ロケットリーグ」「フォールガイズ」も基本プレイ無料に。
バトロワブームの火付け役でもある「プレイヤーアンノウンズバトルグラウンズ(PUBG)」も2022年に買い切り型から基本プレイ無料に移行しました。
このようにオンライン対戦ゲームは基本プレイ無料で売り出すのが当たり前の時代になっているので、「スプラトゥーン」の売り方はむしろ少数派になってきているんですよね。
では、「スプラトゥーン」も追随して基本プレイ無料で売り出すべきなのでしょうか?
ぼくは、任天堂の思想的に当面はないんじゃないかと思っています。
一体、どういうことなのでしょうか?
ここからは「スプラトゥーン」はなぜ基本無料にしないのかを5つの項目に分けて語っていきます。
スプラトゥーンを基本無料にしない理由
その1:任天堂の理念に反する
スプラトゥーンを基本無料にしない1つめの理由は、任天堂の理念に反するからです。
任天堂はソフトの高い価値を認めてもらえるように活動をしているので、基本プレイ無料のゲームには否定的な見方をしていました。
任天堂の元社長である故・岩田聡氏は2011年のGDCでこう話しています。
私たちは、お客様にどうしてもソフトの高い価値を認めていただきたいのです。
(中略)
我々が生み出すものには価値があり、我々はその価値を守るべきなのです。
つまり、任天堂はお金を出してでも遊びたくなる部分に力を入れている会社なので、無料で遊べてしまうゲームを売り出したくないのが本音なんですね。
ここまでの話を聞いて
と思われた方もいるかもしれませんね。
確かに任天堂も基本プレイ無料のゲームを展開しているのは確かです。
スマホゲームはもちろん、Switchでも
- スーパーカービィハンターズ
- テトリス99
は基本プレイ無料で展開していますし、ポケモン関連を含めたらもっとあります。
その点に関して、任天堂の元社長である故・岩田聡氏は2013年のE3 アナリストブリーフィングでこう話しています。
デジタルの形でソフトウェアが供給できるようになったことで、私たちがお客様にソフトを提供し、そこでどのようにマネタイズ(収益化)するかという方法に自由度が生まれました。
ただし、マリオやポケモンのようなゲームをFree to Play型(基本無料)にしようと考えているわけではありません。
なぜかと申しますと、マリオやポケモンのようなゲームは、パッケージソフトとして最初にまとまった金額を払っていただける信頼関係が、すでにお客様との間に確立できているからです。
一方で、私たちが、何かまったく新しいチャレンジをするときに、お客様は「それがまだ面白いかどうかわからない」としたらどうでしょうか。
お客様は、それにまとまったお金を払ってよいものかどうかわかりません。
そのようなときに、過去の任天堂のプラットフォームではできなかった、さまざまな柔軟なマネタイズの仕組みがある今のプラットフォーム(ニンテンドー3DSやWii U)であれば、Free to Play型(基本無料)でご提案ができると思います。
そう、任天堂とユーザーの間に信頼関係が生まれているタイトルは基本プレイ無料にしない方針なんですね。
様々なアスレチックステージを攻略していく「スーパーマリオ」とか。
広大な世界を冒険していく「ゼルダの伝説」とか。
こういった一定以上の信頼価値のあるゲームはユーザーの間で最初にまとまった金額を支払う流れが確立していますから、今から変える必要性はないと感じているようです。
「スプラトゥーン」もそれは例外ではなく、「1」「2」「3」と買い切り型で続いていますので、新しいチャレンジをしない限りは今のままで続いていくのではないでしょうか?
その2:買い切りでも売上が見込める
スプラトゥーンを基本無料にしない2つめの理由は、買い切りでも売上が見込めるからです。
基本無料型と買い切り型。
どちらが多くの売上を見込める確率が高いのか?
近年の傾向ですと基本無料型ではあるんですが、「スプラトゥーン」の場合、買い切り型でも十分すぎるほどの売上を記録しています。
「2」の場合、国内での売上は511万本。
全世界での売上に至っては1,330万本に達しています。
まあ、この数字も「フォートナイト」などの基本無料ゲームの人口と比べると大きく劣るのですが、
こちらは有料タイトルですから、1本6,000円と仮定したら780億円になりますので、相当な大ヒットであることがわかりますよね?
プレイヤー人口にしても依然として多く、「2」はもちろん、「1」をプレイされる方もまだまだ沢山見られます。
「スプラトゥーン1」は
- 普及しなかったWii Uのみでの発売
- 発売から7年以上も経過している
といったハンデを背負っているにも関わらずこの人気ですから、基本無料にする必要性がありませんよね?
その3:任天堂がハード・ソフト一体型の遊びを心がけている
3つめの理由は、任天堂がハード・ソフト一体型の遊びを心がけているからです。
つまり、ニンテンドースイッチや3DSなどのハード。
「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」などのソフト。
それぞれを同じ会社が開発するからこそ可能になる遊びを提案しているんですね。
「スプラトゥーン」はまさにその代表例で、Wii Uに2画面やジャイロセンサー、タッチスクリーンがあったからこそ生まれたゲームだったりします。
ということはですね、今後も任天堂は自分たちでゲームハードを作り、そこに自分たちのゲームソフトを作って売ることになると思うんですよ。
そのためには魅力的なソフトを生み出さないといけませんから、安易に基本無料の道に行くのは考えにくいのではないでしょうか?
基本無料の利点として、
- プレイヤー人口を確保しやすくなる
- 色んな機種で展開しやすくなる
というものがあります。
なので、例えば任天堂がPCなども含めてソフトタイトルを展開することなどがあれば、基本無料は有用な戦略になるかもしれません。
しかし、任天堂は今後も自分たちのゲームハードでゲームソフトを売っていくのをメインにするようですから、「スプラトゥーン」のような目玉タイトルを基本無料にするのは考えにくいと思うんですよ。
任天堂の元社長である、故・山内溥氏はかつて、
ハードというのはどうしても遊びたい『ソフト』を遊ぶためにしかたなく買ってもらう箱なんだ
なんて名言を口にしていました。
近年の経営方針を聞く限り、その点は今も変わっていないでしょうから、「スプラトゥーン」はこれからも買い切り型でやっていくでしょうね。
その4:基本無料はリスクが大きい
4つめの理由は、基本無料はリスクが大きいからです。
確かに基本無料にするとプレイヤー人口が増えやすいので、大きな売上を見込めるチャンスでもあります。
しかし、一方ではリスクも大きいと思うんですよね。
特に大きいのが、お客様との信頼関係の崩壊でしょうか。
基本無料にすると、どうしてもお客様に課金をしてもらうように設計しないといけません。
一昔前ですとスタミナゲージの回復とか、強い武器やモンスターの解禁とか。
最近ですと見た目が変わるスキンとか、キャラクターが踊ってくれるエモートとか。
そういったものを課金して貰うように設計するのが主流となっていますが、これがですね、色々と問題になっているんですよね。
例えば小学生が親のクレジットカードを勝手に使って課金するとか。
ランキング上位になるためにたくさん課金する必要があるとか。
ガチャでお目当てのアイテムが出てこないから結果的に課金しまくるハメになったとか。
そんな話があちこちで聞こえてくるので、基本無料のゲームは負の側面も強かったりします。
もし、「スプラトゥーン」を基本無料にしたらコスチュームやギア、エモート、ブキを有料で販売するとか、アイテムをランダムで入手できるガチャを設置するとか。
ぼくのような素人でもお金を稼ぐ手段が思い浮かびますので、短期的に見たら基本無料にしたら儲かるのは確かです。
でも、世の中って”お金”だけじゃなくて”信頼”も大切だと思うんですよ。
先程も話したように、基本無料にすることでお客様との信頼関係が悪化してしまう事例があったりします。
その結果、「スプラトゥーン」は悪いゲーム。子供には遊ばせられない。
なんてことになったら今後に響いてしまいますから、任天堂としては本末転倒ではないでしょうか?
実際、任天堂の元社長である故・岩田聡氏は2013年のE3 アナリストブリーフィングでこう話していました。
一方で、Free to Play型ソフトは、バランスを逸してしまうと、一部のお客様にものすごくお金を使っていただく結果にもなりかねず、それではお客様との良好な関係が築けませんので、お客様との関係が長続きするように、バランスの取れた、お客様から見てリーズナブルなものにしていきたいと考えています。
ぼくもYouTuberになってから凄く感じるんですが、お客様との信頼関係って大切だと思うんですよ。
正直なところ、このサムネやネタで動画を作ったらめちゃくちゃ再生回数を稼げるんだろうなぁと思うことはよくあります。
でも、それをやったらみなさんとの信頼関係が崩壊してしまうんじゃないか?
そう思ってお蔵入りにした動画は実はたくさんあります。
それと同じように「スプラトゥーン」が安易に基本無料の道に走るのはリスクが大きすぎますので、当面は買い切り型のままでいくのではないでしょうか?
また、一度基本無料にしてしまうと、後戻りができないというリスクもあったりします。
人間ってワガママな生き物で、一度でも安売りをするとそれが基準になってしまうんですよね。
特に顕著なのがスマホゲーム市場です。
実はスマホゲーム市場って黎明期の頃は低価格の買い切り型が主流でした。
例えばあの「パズル&ドラゴンズ」にしても当初は170円の有料ダウンロードを予定していまして、無料販売は期間限定のつもりだったんですね。
ところが無料キャンペーンが好評のため延長となり、結果的に基本プレイ無料のままで行くことになりました。
これは、裏を返せば有料で売るのが難しい流れになっているようにも感じます。
無料だったものが有料になるのは心情的に嫌ですからね。
例えば「スプラトゥーン5」が基本無料になったとして、「6」が買い切り型の有料ゲームに戻ったらどうでしょうか?
おそらく、多くの方は
なんてことになるのは目に見えていますので、そこは慎重になった方が良いとぼくは思います。
その5:運用が困難になる
スプラトゥーンを基本無料にしない5つめの理由は、運用が困難になることです。
基本無料にするとユーザーから課金してもらわないと収益が発生しませんから、常にアップデートをして盛り上げていかないといけません。
例えば「フォートナイト」ですと、頻繁にアップデートをTwitter上で告知して、新要素の追加を発表してしています。
だからこそ多くのユーザーが競合するゲームに流れていかず、長期的な人気を保っているんですね。
しかし、開発スタッフの仕事量が膨大になっているようで、2019年には
Epic Gamesに所属する少なくとも50~100人のスタッフが何週間も100時間以上働いている
といった事実が判明 しました。
「スプラトゥーン」も運営型の方式を取っていますが、それは当初から予定されているものを時間差で追加しているに過ぎず、ある程度は仕事量が決まっていますので、そこまで大きな負担ではないと思うんですよ。
ですが、仮に基本無料にしたらどうでしょうか?
運営スタッフの仕事量が着実に増えるでしょうから、運営に回すメンバーが増えて他のゲームに開発を割くのが難しくなってしまいます。
そうなると新たなゲームが生まれにくい状況に陥ってしまい、多様性が薄れてしまいますから、新しいゲーム体験を追求する任天堂の姿勢とは噛み合わないんですよね。
ですので、その点もスプラトゥーンを基本無料にしない理由の1つに感じます。
将来はわからない
ここまで「スプラトゥーン」が基本無料にならない理由を語っていきました。
- 任天堂の理念に反する
- 買い切りでも売上が見込める
- 任天堂はハード・ソフト一体型の遊びを心がけている
- 基本無料はリスクが大きい
- 運用が困難になる
といった感じですね。
じゃあ100%ならないのか?
そんな質問が来た場合、ぼくは「0%ではない」と返します。
というのも、ゲーム業界は移り変わりが激しいからです。
特にこの10年は様々な転機が起こりました。
家庭用ゲームの売上が落ち込んだのかと思ったらスマホゲームが猛烈に売上を伸ばしたり。
赤字続きだった任天堂がSwitchの大ヒットで最高益をあげるようになったり。
挙げ出したらキリがないくらいそれまでの常識が覆されたので、5年後には状況が大きく変わっているかもしれません。
例えばスマホゲームやパソコンゲーム、クラウドゲームが今以上に普及して家庭用ゲーム機が必要なくなるとか。
任天堂が家庭用ゲームでは収益をあげられなくなってスマホやパソコンを中心に展開するようになるとか。
そうなると任天堂が培ったハード・ソフト一体型の遊びや買い切り型のビジネスモデルを変えざるを得なくなりますから、そんな時に「スプラトゥーン」を基本無料で売り出すという選択肢も生まれてくるとは思います。
とは言え任天堂は今後もハード・ソフト一体型の遊びを中心に展開するようですから、少なくともSwitchの次世代機までは今までの延長線上でいくのではないでしょうか?
「スプラトゥーン」に例えると、Switchの次世代機で出すであろう「4」までは買い切り型で展開すると見ています。
それ以降は・・・基本無料ゲームの動向次第で変わるでしょうね。
基本無料のゲームは今でこそ不健全な側面も強く感じますが、運営側も改善に全力を尽くしていますから、将来的には良い方向に転がる可能性もあります。
そうなったら任天堂も考え方が変わるかもしれません。
任天堂には3つのDNAがありまして、その中には「柔軟性」という柱もあったりします。
急激に変化する世の中に、素早く対応しなければ、私たちは生き残れません。
条件や環境が変われば、最適な答えも変わります。過去の成功法則や常識にとらわれず、変化に柔軟に対応します
そんな文が任天堂の「CSRレポート 2015 」には記載されていますので、世の中の動向次第で変わっていくと思われます。
何にしても、ぼくはこれからも「スプラトゥーン」を始めとする任天堂ゲームを楽しんでいき、時代の変化に対応する任天堂の動向を見守っていきたいですね。
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