
2006年4月に発売されたGBA「MOTHER 3」を今回はレビューします。
GBA「MOTHER 3」はコピーライターの糸井重里さんが
ゲームデザインを手掛けるRPG「MOTHER」シリーズの3作目です。
糸井重里さんによる独特なテキスト・センス
コピーライターの糸井重里さんが手掛けている「MOTHER」シリーズ。
ゲームクリエイターとは異なる才能を持った方が手がけているだけあって、
今作でも他のゲームでは感じられない独特な味わいを持っています。
特にそれを感じられるのが、キャラクターのテキストです。
少ない文章の中に味わい深いメッセージが込められていて、
考えれば考えるほど味が出てきます。
驚くべきことにメインのキャラクターだけではなく
街の中にいる動物たちに話しかけてもそんなメッセージが隠されていて、
普段は街の人の会話をすべて聞かない僕でも聞いてしまうほどの魅力を感じてしまいました。
テキスト以外にも温かそうに見えて実は黒い一面が強いストーリー、
妙にリアルだけどどこかシュールな敵キャラクターなど他では見られない独自のセンスが詰まった作品で、
そういう意味ではオリジナリティを感じられると思います。

レトロなグラフィック
本作は2006年に発売された作品ですが、グラフィックは16bitテイストで描かれています。
「MOTHER 2」とは違ってクォータービューではなくトップビューで
前作ほど独特なグラフィックではありませんが、
ドット絵による温かさは感じられ、古き良き時代を思わせるグラフィックになっていると思います。
実はこのゲーム、当初はN64向けに発売が予定されていて
そちらはフルポリゴンの大作RPGだったんですが、
紆余曲折を経てすべて作り直してGBA向けのコンパクトなクラシックスタイルのRPGになったんですよね。
それについて色々思う事はありますが、開発のリスクは大幅に軽減されたでしょうし、
こちらの方が味わい深いので、そういう意味では間違っていなかったと思います。
ただ、N64で発売が予定されていた当時は
とんでもなく壮大で重厚長大な作品とアナウンスされていただけに、
コンパクトな形に収まってしまったのは少し寂しく感じたりも。
このゲームはN64で発売が予定されていた当時は本命視するくらい期待していたので。

ちょっとユニークな戦闘システム
戦闘システムはオーソドックスなコマンドバトルになっています。
通常攻撃をするか魔法攻撃をするか、それともガードをするかアイテムを使うかをそれぞれ選んでいき、
ステータスの素早さが高い順に行動していくようになっていますが、
2つだけ独自のシステムが用意されていました。
1つは攻撃時にタイミングよくボタンを押す事で連続してダメージを与えられるサウンドバトル。
ボタンを押すタイミングは戦闘のBGMによって異なっていて、
ちょっとしたリズムアクションゲーム的な楽しさを味わえるようになっています。
もう1つはHPメーターの減少速度がゆっくりのドラムシステム。
本作ではどれだけ強烈なダメージを受けてもすぐに体力は0になりません。
例えばHPが299で300のダメージを受けても
298、297とHPメーターのドラムが1ずつ減っていくだけで、
体力が0になるまで一定の猶予があるんです。その間に回復をすれば体力は0にならないので、
致命的なダメージを受けても諦めなくても良いのが目新しいですね。
サウンドバトルの話が出てきたのでBGM自体がどうなのかと言いますと、
懐かしさを感じられるものはあったものの飛びぬけて良いと思うものはありませんでした。
もっとスーパーファミコン時代の熱いものを期待していたのですが。
でも、タイトル画面で最初からすべてのBGMを聴く事が可能で(曲名はゲームを進めていく事で判明)、
この時代のゲームでは珍しくお気に入り機能を搭載してまとめて聴くことが出来たり、
ホールド機能によってポケットに入れて持ち歩きながら音楽を楽しめるのは良いと思いました。

ゲームでしか味わえないラストシーン
本作のラストシーンを具体的に語る事は出来ませんが、
非常に見所が多く、考察し甲斐のある展開でした。
ストーリーはタイトルに合った展開だと思いますし、
ハッピーエンドともバッドエンドとも受け止められる終わり方で
昔のゲームみたいな想像する楽しさがあります。
ラストの戦闘シーンも本作の独自システムを上手くストーリーと絡めたものになっていましたね。
ゲームというメディアだからこそ表現出来たストーリーに感じられ、
ゲーム性とストーリー性が融合した理想的な形になっていると思いました。
全体的にクラシック
狙ってやっている部分もあると思いますが、2006年に発売されたRPGとしては古臭く感じます。
グラフィックが16bitテイストなのは良いんですが、
戦闘システムは多少の独自要素があるとはいえ古臭くてもう一工夫欲しいと思いましたし、
ユーザーインターフェースも同時期に発売されたRPGと比較して快適とは言い難いです。
例えば拾ったアイテムは先頭のキャラクターが持つようになっていて、
2番目以降のキャラクターに持たせるにはいちいち「渡す」を選択しないといけなかったりとか。
いくら仲間がはぐれることがあっても道具は共有にしてしまって
ゲームならではの「嘘」を付いても良かったと思うのですが。

行動面での自由度が低い
このゲームは章仕立てとなっていて、章ごとに主人公や舞台が変わります。
そのせいで行動面での自由度が制限されてしまって、
以前訪れたところに戻って探索しにくい構造になっています。
せっかく味わい深いテキストが沢山隠されているだけに、
以前訪れた場所に戻ってテキストを楽しみにくいのは勿体なく感じます。
取り逃したアイテムの回収もしたいですしね。

独自要素が噛み合っていない戦闘システム
攻撃時にタイミングよくボタンを押す事で連続してダメージを与えられるサウンドバトル。
HPメーターの減少速度がゆっくりのドラムシステム。
どちらもユニークではありますが、噛み合っているとは言えません。
致命的なダメージを受けてHPメータがどんどん減っている時に
サウンドバトルでコンボを繋げていたら体力を回復する時間がなくなってしまいますからね。
体力がどんどん減っているのであえてコンボを繋げないというある意味での戦略性は生まれていますが。
糸井重里さんならではのセンスが詰まった作品で、
特にラストシーンはGBAソフトとは思えないくらい長くて
その間に沢山のメッセージが伝わって来て感動的なところもあるのですが、
いかんせん基本はクラシックで平凡なRPGのためゲームの面白さとしては普通に感じてしまいました。
確かにあのエンディングについては評価できる部分もあって考えさせられますが、
面白いと感じられる時間がそこまでなかったのもあって個人的には平凡評価です。
終わりが凄ければすべて良し?
こんな人には特におススメ。
・感受性が豊かな人。
・クラシックなRPG好き。
こんな人にはおススメできない。
・クラシックなRPGに飽きている人。
・想像する楽しさが分からない人。
MOTHER 3/お気に入り度【60/100%】
プレイした時間・・・約25時間
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自分に取ってのマザー3は、64版の「マザー3豚王の最期」ですね。結局発売されず、自分もPSハードに移行してしまったので、GBA版のマザー3は関心自体が薄れてしまって、いつの間にかに発売されてたって感じです(笑