
かまいたちの夜 輪廻彩声/PSV(Z指定)
2017年2月に発売されたアドベンチャーゲーム、PSV「かまいたちの夜 輪廻彩声」。
スーパーファミコンやプレイステーション1で発売されたサウンドノベル「かまいたちの夜」をリメイクした作品です。
プラチナトロフィーを獲得するまでやり込んだので、本記事では本作のレビューをしていきます。
目次
スピーディに繰り広げられるサスペンスホラー
若い大学生カップルがスキー旅行で訪れた滞在先のペンション。事件はペンションの部屋で見つけた一枚の紙に書かれた文章から始まります。
「こんや、12じ、だれかがしぬ」
最初はイタズラだと思われていました。しかし、時間通りではなくとも本当に1人1人消えて行き、事態が一変。
最初は外部の人間がやったんだと思われていましたが、徐々にペンションの中にいる人物がやったんだと思うようになり、疑心暗鬼になっていきます。
この恐怖感はなかなかのもので、真犯人が分かるまでのスリル感は良かった!話の展開もスピーディで、退屈しません。
ただ、Z指定にするのであればもっと怖くしてほしかった。過激なイベントCG(※閲覧は自己責任)が用意されているんだけど、Z指定ならもっとやれてもおかしくないんですけどね。
テキストにしてもオリジナル版に忠実なのは良いですが、Z指定なりのアレンジがあっても良かったと思いました。
分岐が多い事で生まれるストーリーに介入している感
このゲームは分岐が非常に多いです。2~3分に1回は分岐が用意されているんじゃないかと思うほど。
それだけ細かく選択肢が用意されているという事でストーリーに介入している感は高く、自分がストーリーを動かしているんじゃないかと錯覚してしまいます。
選択肢次第では事件の真犯人を突き止めて解決に向かうことができるので、推理する楽しさもありました。
一体、誰がこんな残酷なことをしたのだろう?真犯人を暴いて事件を解決に持って行くにはとあるタイミングで発生する名前入力画面で怪しい人物の名前を入力しなければなりません。
メインストーリーは4~5時間程度と短く、勘が鋭い人は1時間もかからずにエンディングまで行けるでしょう。
ボイスのおかげでギャグコメディ色がアップ!
リメイク版はフルボイスとなっていました。とにかくキャラが喋る喋る!ボイスの恩恵を特に感じられたのは、話がギャグコメディ方面に転がって行った時です。
選択肢によっては思わず「何でそんな発言するねん!」とこちらが突っ込みたくなるようなセリフを主人公が放つんですが、声優さんがキレッキレで何度か吹き出してしまいました。
主人公の透(とおる)は真面目な選択肢を選ぶと探偵のような鋭い推理をして周囲を関心させるんですが、間違った選択肢を選ぶとボケまくるので面白いんですよね。深夜アニメに出てくる典型的なムッツリスケベになってしまうんです。
特に面白かったのがここ!心の中での台詞なのでボイスはないんですが、ガールフレンドの真理とバイクに乗って選択肢を「後部席でお尻を抱くように腰に手を回す」にすると、主人公の股間が真理のお尻に密着するとか言うんですよ。想像しただけで笑ってしまったw
セクシー方面のネタは他にもあります。噂の「ピンクのしおり」はそうでもなかったけど、隠しシナリオの「ちょっとエッチなかまいたちの夜」はボイスだけで展開されるだけあって想像が膨らむ内容で、色々楽しませてもらいました。
チュンソフトの遊び心は健在!
オリジナル版はチュンソフトの作品という事で、同社の遊び心が詰まっています。
選択肢は面白いものばかりですし、用意されているバッドエンディングのぶっ飛び具合が凄い!
選択肢によっては数年後にジャンプして話が展開するなど飛躍し過ぎていて、「何でそうなるんや!」と言いたくなってしまいます。
隠しシナリオもぶっ飛んでいますね。思わず何のゲームなのか忘れてしまうようなダンジョンに迷い込んでしまったり、謎の新キャラクターが表れてムードが一変したり。
隠し要素の入れ方も凄い!攻略サイトを確認しないと絶対に分からないような秘密のルートが用意されていて、サービス精神旺盛です。
キャラ設定を無視した隠しシナリオのシリアス展開はちょっと…
一方でキャラ設定を無視した隠しシナリオのシリアス展開は受け入れられませんでした。
コメディ路線だったら割り切れるんですが、シリアス路線で本編では優しかったキャラが隠しシナリオでは豹変したり、悪の組織に属するなどキャラ設定を無視した展開は合いません。
「スパイ編」、「偏獄の真理編」辺りがその印象が強く、どこか冷めた感じで話を進めてしまった。
偏獄の真理編に関しては今作で加わった竜騎士07さんのシナリオになるのでもう少し語らせていただくと、とても不思議で切ない話でした。
最初は同じような事がずっと続くのかと思って焦りましたし、その後の展開は突っ込みどころ満載だけど切なかった。ただ、本編のテイストとは大きく異なるので、どうしても「え?ちょっと待ってよ」と言いたくなってしまいました。
個人的にシリアスな作品は整合性を求めてしまうようなので、キャラ設定を大事にしつつ、その上で話を広げて行かないと納得できないみたい。
偏獄の真理編目当てでオリジナル版プレイヤーが本作を買うのはあまりおススメ出来ません。人を選ぶ内容ですし、話の長さも30分程度ですから。
作業感が強いメインシナリオクリア後
メインシナリオの「ミステリー編」をクリアすると、徐々に隠しシナリオがアンロックされていきます。
新モードが追加されたり、どこかに選択肢が追加されて話の展開が広がって行くんですが、どうしても作業感は出て来ますね。
幸いにも快適性を高める機能が満載で、好きなところから再開出来たり、高速スキップが用意されていてサクサク進むんですが、選択肢が非常に多いのでそれでも隠しシナリオを探すため総当たりで探して行くのは作業的です(どこに追加されたのか抜けているナンバーを頼りに探して行くのは謎解きみたいで少し楽しいですが)。
その隠しシナリオも当たり外れが激しく、合う合わないがあるので徐々に楽しかった本編の印象が薄れてしまいました。
評価には含めませんが、プラチナトロフィー獲得までの道のりも作業感が凄く、何度も辞めようかと思ってしまった。
フローチャートを見ながら選択肢をすべて埋めるのは簡単そうに感じますが、迷路の中にある選択肢をすべて選ばないといけなかったり、同じ選択肢でも選ぶ順番によって別カウントされるところもあるので、何十回も同じシーンを繰り返さないといけないんです。
超作業的なうえに攻略サイトを活用しないと一生できないくらい分かりにくいので、選択肢やメッセージの100%コンプリートはプラチナトロフィーのシステムがなかったらやっていませんでした。
最近のPSVITAソフトでは珍しく、ゲームを起動しながらトロフィーリストを確認出来たのは良かったんですけどね。タッチ機能非対応なのは惜しいけど。
キャラ絵は入り口としては良いが、ホラーゲームに合っているかは微妙
リメイク版では新たにキャラクターイラストが追加されました。
それまで青いシルエットだったキャラクターが具体化される事でファンの間では拒否反応を示す人が出てきても無理はありません。
自分がそれまでに持っていたキャラクター像とは違うでしょうからね。好きな漫画がアニメ化、実写化された時に感じる違和感みたいなものだと思います。
個人的には入り口としては良いかと思いました。青いシルエットだと地味に感じてしまいますので、新規は入りにくいんですよね。
今風のアニメ絵にしたら若いユーザーの一部は興味を持つでしょうから、間口を広める役割を果たせていると思います。
ただ、キャラクターデザインはホラーアドベンチャーに合っているとは思いませんでした。
美少女が多いのは百歩譲って物語の鍵となるおっさん勢に貫禄がなく、そこで損をしています。もっと渋さが欲しかった。
でも、このゲームで一番好きなのはおっさんの香山さんだったりします。口が達者で喜怒哀楽が激しく、関西弁による虫の良い話を連発してきてムードメーカーなんです。専用のBGMまで用意されていて、キャラが濃いw
あとは主人公。声優の力も大きいですが、それでもユーモアを持っていて男らしくスケベで嫌いになれない。
女性キャラクターでは真理かなぁ。よくいるしっかり者の女性で、頼りになります。あとは香山さんの妻w
全体のまとめ
メインシナリオの「ミステリー編」はそれなりに楽しめました。
ただ、全体的に短く、ギャグコメディの主張が意外と強くて隠しシナリオがキャラ設定無視で当たり外れがあったので当初のサスペンスホラー的な印象が薄れてしまい、よく分からないまま終わった感があります。
Z指定の割には過激さも足りず、もうちょっとホラーで怖がらせてほしかったのが正直なところです。
キャラクターイラストは恐怖度を高める役割を果たせているのかといわれると、そうでもないですね。それよりもボイスと合わさった関係でギャグコメディ色が強まっている印象で、怖いと感じた時よりも吹き出した時の方が印象的でした。
こんな人には特におススメ。
・ホラーアドベンチャー好き。
こんな人にはおススメできない。
・整合性を求める人。
・キャラ絵に拒否反応がある人。
かまいたちの夜 輪廻彩声/お気に入り度【60/100%】
プレイした時間・・・約15時間
これはこれで面白そう、ですが…。個人的には、シルエットの方が想像でプレイできるので好きかな…。
これは、小説と同じ原理ですかね(^^)