ゲームメーカーの歴史を振り返る特集コーナー。第4弾ではレベルファイブにスポットを当てて行きたいと思います。
数年に一度、メガヒットタイトルを生み出して大きなムーブメントを生み出している比較的新しいゲームメーカーですが、ここまで決して順風満帆ではありませんでした。
本記事ではデベロッパー時代から振り返っていきます。
2000年代前半
当初はSIEとベッタリだった!?
1998年に設立されたレベルファイブ。
実は当初、プレイステーションのハードメーカーであるSIEのセカンドパーティ的な存在だったんです。
デビュー作はSIEの支援を受けて制作されたPS2「ダーククラウド」。
本作はアクション要素が強いRPGで、自動生成のダンジョンが特徴となっていました。
日本での売上は10万本程度と小規模でしたが、全世界では100万本以上の大ヒットを記録。レベルファイブは1作目から大きなチャンスを掴むのでした。
翌年には続編のPS2「ダーククロニクル」を発売。前作のシステムをベースにしつつ、トゥーンレンダリング調のグラフィック、フルボイス、ゴルフ風のミニゲームなどが話題となりました。
ドラゴンクエストVIIIを制作して注目度が大幅アップ!
このようにPS2向けのオリジナルタイトルで確実に株を上げていったレベルファイブ。
なんと2004年にはあのメガヒットタイトル、PS2「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」の開発に携わります。
シリーズ初のフルポリゴンとなった本作はまさに正統進化した「ドラゴンクエスト」との呼び名が高く、期待通りの高評価を獲得。
さらにシリーズでは初めて延期無しで発売するという実績を残し、レベルファイブは期待の大型新人みたいな扱いを受けるのでした。
ローグギャラクシーでやらかす!?
ここまで恐ろしいほど順風満帆だったレベルファイブですが、PS2「ローグギャラクシー」で初めてやらかしてしまいます。
PS2「ローグギャラクシー」は「ダーククラウド」「ダーククロニクル」に続くSIEとタッグを組んで生み出された作品ですが、前年に発売された「ドラゴンクエストVIII」の成功で天狗になっていたのでしょうか?
異常なくらい高いハードルを自ら作り上げ、史上最高の大作RPGであるかのような広告展開を行ったんです。
目標は「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズ。
発売4ヵ月前からのTVCM展開。シームレスなゲームプレイ。有名俳優・女優を起用した声優。目標売上は100万本。
しかし、実際に製品はユーザーの期待度を大きく下回るものとなっていて、2005年のクソゲーオブザイヤー大賞に選ばれるという不名誉な結果を残してしまいます。
販売本数も35万本程度で期待ほど高くはなく、ユーザー評価の低さと相まってワゴンセールの常連となってしまいました。
2000年代後半
レイトン教授で華麗にパブリッシャーデビュー!
「ローグギャラクシー」の歴史的低評価によって一部のユーザーにクソゲーメーカーの烙印を押されてしまったレベルファイブ。
しかし、レベルファイブの本当の意味での快進撃はここから始まるのでした!
なんと2007年にDS「レイトン教授と不思議な町」でパブリッシャーデビューを果たしたんです!
それまでのレベルファイブはあくまでも下請けメーカーで、自社でゲームソフトを開発しても販売する事はなかったんですね。
それがDS「レイトン教授と不思議な町」からは販売も担当するようになったんです。
パブリッシング第一弾として発売された本作は当時大ブームだったDS「脳を鍛える大人のDSトレーニング」人気に便乗したような作品で、独自要素として有名俳優の起用やアニメーション、ストーリー要素を盛り込んでいました。
DS市場のメインユーザー層にピッタリとマッチした本作はジワジワと売れ続け、なんと国内だけで100万本を超える大ヒットを記録!
さらに海外でも大人気で、300万本を超える世界的なヒット作となりました。
その後も「レイトン教授と悪魔の箱」「レイトン教授と最後の時間旅行」と1年置きに新作を発売。
いずれも大ヒットを記録します。当初はこの三部作で終わる予定でしたが、あまりの人気にシリーズの続行を決意。物語の舞台を過去に移し、その後もシリーズ作品が発売されていきます。
イナズマイレブンで子供たちのハートをつかむ!
2008年にはDS「イナズマイレブン」を発売。
本作はゲームだけではなく、コミック、TVアニメ、映画、CDなどと絡めたクロスメディアプロジェクトで、子供をメインターゲットに展開されました。
当初の人気はそこまで高くありませんでしたが、強烈なキャラクター性や熱いストーリー展開が徐々に広まっていき、シリーズ2作目は100万本を超える大ヒットを記録!
「ポケットモンスター」シリーズほどではないものの同じくクロスメディアプロジェクトで人気を博した「ロックマンエグゼ」と同等かそれ以上の人気となり、レベルファイブは「レイトン教授」シリーズと並ぶ巨大なIPを獲得するのでした。
下請けの仕事もバッチリ(?)こなす!
「レイトン教授」シリーズと「イナズマイレブン」シリーズの連続ヒットでスッカリ人気ゲームメーカーとなったレベルファイブ。
SIEやスクウェア・エニックスとの関係も引き続き良好で、PS3「白騎士物語」(2008)やDS「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」(2009)の開発にも携わります。
どちらの作品もそこまで高く評価されていませんが、両ハードの普及に貢献しました。
特にDS「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」は育成重視の方向性やすれ違い通信の仕様が後のソーシャルゲームブームに通ずるムーブメントを打ち出し、シリーズ最高の販売本数を記録。
レベルファイブは「ドラゴンクエスト」シリーズでも2作続けて成功を収めるのでした。
2010年代前半
二ノ国を華々しく世に送り出すものの・・・
「ローグギャラクシー」で失敗したものの、基本は成功続きのレベルファイブ。しかし、2010年代に入ると少し雲行きが怪しくなっていきます。
2010年末にはDSで「二ノ国 漆黒の魔導士」を発売。スタジオジブリとタッグを組んで送り出された本作は同梱される本との連動が大きな特徴となっていて、一気に60万本を出荷するほど高い期待度で華々しく発売されました。
しかし、予想以上に初動は鈍く、非常にかさ張るため発売直後から大規模な値崩れが発生。
その影響で1年後に発売されたPS3「二ノ国 白き聖灰の女王」は大幅に入荷を抑えられ、開発の手間を考えると大コケといっても良いほど厳しい販売本数となるのでした(その後、海外で大ヒットしますが)。
3DSをメインプラットフォームに!
2010年の「LEVEL5 VISION 2010」では今後のメインプラットフォームを新型ゲーム機、3DSに移行すると発表。
当初はDSソフトとして2010年末に発売する予定だった「レイトン教授と奇跡の仮面」を3DS向けに変更し、ロンチタイトルとして発売。
「ファンタジーライフ」も対応ハードをDSから3DS向けに変更し、「イナズマイレブン」シリーズも2011年から3DS向けに展開することを明らかにします。
さらにWii「428~封鎖された渋谷で~」で知られるイシイジロウ氏とタッグを組んだ3DS「タイムトラベラーズ」を発表し、あの「逆転裁判」とのコラボレーションタイトル、3DS「レイトン教授 vs 逆転裁判」を電撃発表!
他社が3DSでの展開に足踏みする中、レベルファイブは全力でサポートしていくと宣言するのでした。しかし・・・
早過ぎるハード移行や完全版商法が仇となる?
「二ノ国」で再び怪しくなってきたレベルファイブは、対応ハードを3DSに移行してからは苦難続きとなります。
先陣を切って発売された「レイトン教授と奇跡の仮面」は3DSのロンチタイトルとしては最高の初動となるものの、前作を大きく下回る売上に。
3DSに舞台を移した「イナズマイレブンGO シャイン/ダーク」も前作比半減。
それまで100万本近い人気タイトルだったのに、僅か1年で50万本クラスまでランクダウンしてしまいました。
その後もめげずに新作を3DS向けに発売するもののDS時代の全盛期には程遠い売上で、どちらのシリーズも2013年で一度、打ち止めとなってしまいます。
その一方で2011年にはPSPで新たなクロスメディアプロジェクトの「ダンボール戦機」を発売。
プラモデルを同梱して発売するという斬新な販売手法やTVアニメ展開が話題となり、1作目こそは30万本を超えるヒットを記録するものの僅か半年での完全版発売や早過ぎる新作リリースであっという間に人気は低迷。
僅か3年程度で新作が全く発売されなくなり、「イナズマイレブン」以上の短命に終わってしまいました。
発表会で話題となった「タイムトラベラーズ」も3DSに加えてPSVITA/PSPで発売するものの振るわず。
3DS「レイトン教授 vs 逆転裁判」も期待ほどのセールスにはならず、発売直後から値崩れが発生してしまいます。
機動戦士ガンダムAGEの失敗で大ピンチに!?
そんなレベルファイブの追い打ちをかけたのがアニメ「機動戦士ガンダムAGE」。
レベルファイブが企画協力として参加し、ゲーム化を前提としたクロスメディアプロジェクトとして展開するものの既存のガンダムユーザーからは酷評の嵐となりました。
ターゲットにしていた子供層の取り込みも失敗に終わり、視聴率は低迷。目玉のゲームPSP「機動戦士ガンダムAGE ユニバースアクセル/コズミックドライブ」も振るわず、ファンの間では黒歴史となっています。
元凶となったのが、レベルファイブ社長の日野さんが担当したシナリオ。
日野社長が描くシナリオは以前から一部のユーザーからは不評だったんですが、この時は完全に悪い方へ作用してしまったんですね。
セガに訴訟されて大・大ピンチに!?
レベルファイブの苦難はまだまだ続きます。
2012年末。セガに特許を侵害していると訴えられ、該当する「イナズマイレブン」シリーズ8作品の販売差止めと廃棄。約9億円の損害賠償を求められます。
レベルファイブ側は争う形となり、裁判に踏み切りました。
現在も裁判は続いていますが、レベルファイブ側は圧倒的に不利で、この件がきっかけで「イナズマイレブン」シリーズの展開が一旦、終了したんじゃないかという見方もあるようです。
スマホ市場で懸けに出るものの上手く行かず
2011年~2012年は失敗続きだったレベルファイブ。巻き返しを図るため今度は「パズル&ドラゴンズ」などで賑わっていたスマートフォンゲーム市場に肩入れするようになります。
代表的なのが「ワンダーフリック」。
当時のスマートフォン向けソーシャルゲームとしては破格のクオリティで送られた本作は2013年の「LEVEL5 VISION 2013」で華々しく発表されました。
対応機種もiOS/Androidだけに飽き足らず、PS4/PS3/PSVITA/Xbox One/Wii Uにも対応予定。本気で作られたソーシャルゲームとしてアナウンスされていました。
しかし、サービス開始直後は恐ろしいくらいのメンテナンスやリリースの遅れ、不具合の多さでユーザーからは総スカンをくらい、僅か2年弱でサービス終了。
結局、スマホのみの展開で、コンシューマー向けはお蔵入りとなりました。
その後も「レイトン7」を3DSではなくスマホ向けに展開すると発表するものの、延期に次ぐ延期で2017年になった今でも展開されず。
「ファンタジーライフ2 ふたつの月とかみさまの村」もスマホで展開すると発表するものの、3DS版を期待していたユーザーからは大バッシングとなり、延期に次ぐ延期でこちらも発表から2年以上が経ってもサービスは開始されず(タイトルは「ファンタジーライフ オンライン」に変更)。
それ以外のスマホ向けタイトルも軒並み延期となり、レベルファイブ=延期の常習犯という新たな烙印が押されるのでした。
結局、レベルファイブのスマホ事業は上手く行っておらず、それどころか延期に次ぐ延期でユーザーからの信頼度が下がるばかりです。
2010年代後半
妖怪ウォッチの社会現象で大復活!
DSから3DSへのハード移行の失敗
機動戦士ガンダムAGEの大失敗
セガとの対立
完全版商法や発売延期ラッシュによる信頼度の低下
スマホ市場での失敗
やることなすことのほとんどすべてが裏目に出てしまったレベルファイブに新たな光の手が差し伸べられます。
それが妖怪ウォッチ!
2011年に新たなクロスメディアプロジェクトとして発表された本作は2013年にコミック版とゲーム版を発売します。
出足こそは初期の「イナズマイレブン」と同じく鈍かったものの、2014年から始まったTVアニメによって人気が爆発。
それまでは鈍い売上だったゲーム版「妖怪ウォッチ」の売上が急上昇し、最終的には100万本以上の販売を記録しました。
さらに人気が最高潮に達した2014年の夏休み頃に発売された2作目の「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」は初動から130万本以上を売り上げるほどの爆発的ヒットを記録!
僅か1週間でレベルファイブのオリジナルタイトルとしては史上最大のヒット作となり、関連作も次から次へと売れて社会現象を果たします。
その規模はかつての「ポケットモンスター」に匹敵するレベルで、TVアニメは子供たちの人気No1に。
映画も大ヒットを記録し、関連グッズも驚異的なペースで展開。関連ユニットは紅白歌合戦に出場を果たしました。しかし・・・
乱発や完全版商法であっという間に下火へ
せっかく大きなチャンスを掴んだレベルファイブですが、いつもの悪い癖で「妖怪ウォッチ」人気はあっという間に下火となります。
「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」から僅か半年でバージョンアップ版となる「妖怪ウォッチ2 真打」を発売。
その後も3DS「妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊」、Wii U「妖怪ウォッチダンス JUST DANCE スペシャルバージョン」、3DS「妖怪三国志」、iOS/Android「妖怪ウォッチ ぷにぷに」と乱発をするようになり、シリーズ3作目となる「妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ」で早くも売上は3分の1程度まで落ち込んでしまいます。
アニメや映画の展開も実写化やリアル化、方向性の一新などチャレンジングなのは良いものの迷走しているのは否めず、人気にブレーキをかけてしまいました。
これは持論ですが、レベルファイブは企画やインパクトありきの印象で、内容は二の次に感じます。それがコンテンツを持続できない要因なのではないでしょうか?
また、「イナズマイレブン」や「ダンボール戦機」の時もそうでしたが、目先の利益だけを求めた完全版の発売が多すぎます。
コンテンツを持続させるのであれば、リリース展開はもっと慎重に行うべきです。
レイトンやイナズマイレブンを復活させ、スナックワールドで再始動!
2014年の「妖怪ウォッチ」ブーム以降、レベルファイブは完全に同シリーズへ依存したソフト展開を行っていました。
そのため他の新作が全く発売されず、既存のレベルファイブファンにとっては不満が募っていたんですね。
そんな中、2017年からは「妖怪ウォッチ」シリーズを休止させ、再び様々なシリーズ展開を果たすようになります。
「レイトン教授」シリーズは3DS/スマホのマルチタイトルとして新シリーズの「レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀」を発売。
「イナズマイレブン」シリーズは成長したファンをメインターゲットにした「イナズマイレブン アレスの天秤」を複数の機種で発売。
PS4向けには「二ノ国II レヴァナントキングダム」を発表!海外を中心に展開していくようです。
そして真打ちとなるのが「スナックワールド」。
3DSとスマホのマルチタイトルとして発売される本作は「妖怪ウォッチ」に続くレベルファイブの新たなクロスメディアプロジェクトで、子供を中心に大々的に売っていくようです。
果たして「スナックワールド」は「妖怪ウォッチ」に続いて社会現象を巻き起こすのでしょうか?レベルファイブの戦いはまだまだ続きます。
▼ゲームメーカーヒストリー記事一覧
ハドソン / スクウェア / エニックス / レベルファイブ / カプコン
スナックワールド トレジャラーズ (【数量限定封入特典】限定ジャラ「クリスタルソードα 」 同梱)
売り上げランキング: 10
レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀
売り上げランキング: 60
地元福岡県民としてかなり思い入れがありますね。人生で初めてプレイしたドラクエを作ったのがわりと近くにあったってことに驚いて。もともと頭の体操シリーズが好きでまさかゲームになると思ってなかったので、タッチペンで楽しめるのは嬉しかったなぁ。
レベルファイブは任天堂とは違って万人向けではなく子供向けを得意とする以上、子供の流行り廃りのサイクルの早さも認識した上で新しい子供向けを作り続けるっていう印象。大人でも楽しめるゲームを作る気は無さそうだし。別にスマホゲーにシフトするのはいいんですが、もう少し開発力あげてくれないかなぁ…
ところでレベルファイブを取り上げる記事に関わらず日野さんの文字が出てこないのは珍しいなと。ゲーム会社史上最高の商才の持ち主だと思います。