Everybody’s Gone to the Rapture (エブリバディーズゴーントゥザラプチャー)-幸福な消失-
2015年8月に発売された一人称視点のアドベンチャーゲームです。価格は約2,160円。本記事では本作のレビューをしていきます。
目次
1984年のイギリス田舎村を再現!
本作で特筆したいのが、1984年のイギリス田舎村を再現している事です。
細かい木の枝。透明感のある川の流れ。時代を感じさせる村の小物。
PS4のマシンパワーを活かして非常に細かく作り込まれています。
驚いたのが影の表現です。ゲーム内では時間が流れるため影の位置も変わるんですが、複雑な形をしている影も細かく動くのでPS4の処理能力をフルに活かしています。
僕は自然がいっぱいの田舎村が好きなので、そんな世界を美しく描き、自由に歩き回れるという点は嬉しかったです。
新緑の時期は公園で緑を眺める事があるけど、天候が悪かったり、緑が少ない冬の時期はこのゲームを楽しむのも良さそうです。
誰もいない田舎村。一体、何が起きたのか?
自然がいっぱいでのどかな村ですが、誰も暮らしていません。オープニングからエンディングまで誰一人会う事はありませんでした。
それもそのハズ。この村では悲劇によって全員が消失し、完全無人となっているからです。しかし、村の至る所に人々の想いが隠されていて、一体、この村で何が起きたのか徐々に分かっていきます。
登場人物はそれなりに多く、複雑な人間模様が描かれていました。単に悲劇から逃れるために脱出を図るだけではなく、絆や裏切りなど人間らしさを感じられる描写があって追っていくとそれなりに面白いです。
演出も良いですね。人々の想いに合わせて天候やBGMが変化し、中には幻想的なものもあるので上手くハマれば感動を味わえると想います。
ゲーム性、アクション性はほぼ皆無
本作は一人称視点のアドベンチャーゲームですが、ゲーム性、アクション性はほぼ皆無です。え?ここまで割り切って作るものなの?と言いたくなるほど。
ジャンプをする事は出来ませんし、オブジェクトへの干渉も扉の開け閉めやラジオやテレビのON/OFFくらい。ダッシュ機能こそはありますが、移動速度はほとんど上がらず、全体マップはそれなりに広いので遅く感じます。
本作でできる事は本当に田舎村に隠された人々の想いを探すだけ。しかもゲームクリア必須のものはごく僅かで狙ってクリアしようと思ったら1時間未満で終わります(ノーヒントでプレイしたら10時間かかるかもしれませんが)。
せっかくグラフィックが美しいだけに、せめてオブジェクトへの干渉がもっと出来たら良いと思うんですが・・・
同じようなコンセプトの「Gone Home(ゴーンホーム)」はその辺りがしっかりしていて、部屋の小物を細かく手に取ったり、引き出しの開け閉めが出来たのに。
コンセプトは良いが、プレイヤーに物語を楽しませるための導線が弱すぎる
無人となった田舎村で何が起きたのかを探っていくコンセプト自体は良いと思いました。
しかし、プレイヤーに田舎村を探索させて物語を楽しませるための導線があまりにも弱すぎます。
いきなり田舎村からスタートして、何の解説もなしに「さあ!田舎村で何が起きたのかを探索してみよう!」なんて言われてもねぇ。
例えばオープニングムービーを用意して各キャラクターの悲劇を描くなどしたら少しは興味を持って調べようとする気になるんですが。
見ず知らずの人々の間で何が起きたのかをほぼ音声や字幕だけで想像するのはかなりの興味を持たないと厳しいです。
しかも好きな順番から人々の想いを調べられ、中にはサブ的なものもあるので断片的になりがちだから相関図などをメモしないと整理できないし。
エンディングまでのフラグ立ても分かりにくく、何故、見ず知らずの人の物語を探るため何時間も必死こいて探索しないといけないのかと思ってしまいました。
例えばゲームをプレイしていてお世話になり、好きになったキャラクターだったら積極的に調べようと思うんですけどね。
好きでも嫌いでもなく、当事者でもないまま田舎村で何が起きたのかを調べるのは相当な興味がないと厳しいところがあります。
ただ、人々の想いを演じている声優さんの演技力は良かったです。日本語音声で感情がこもっていて、それがきっかけで物語に興味を持つことがありました。これが英語音声だったらさらに厳しかったでしょうねぇ。
全体のまとめ
無人となったイギリスの田舎村を探索できるコンセプト自体は良いと思いました。これは映画や小説などでは表現できない手法で、ゲームという媒体を活かした作品だと思います。こういう作品の存在を否定するつもりはありません。
しかし、ゲーム要素が皆無に等しく、誰が誰なのか分からないままこの世界に起こった事を積極的に調べていくのは厳しいところがあります。
周回プレイをしたり、相当な想像力があれば全貌が見えて楽しめそうですが、そこまでやるたくなるほどのナビゲートが上手く行っているとは言えないし、ゲーム的に面白い作品じゃないのでモチベーションが持ちません。かなり人を選ぶ作品だと思います。
こんな人には特におススメ。
・小説好き。
・イギリスの田舎村好き。
こんな人にはおススメできない。
・ゲーム要素を重視する人。
・想像力が弱い人。
Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-/お気に入り度【30/100%】
プレイした時間・・・約5時間
雰囲気ゲーみたいな感じかな?
こういうタイプで導線が弱いと確かにやってて辛いものがありそうですね。
私はオブジェクトへの干渉はkentさんほどは重視していませんが、こういうゲームこそストーリーの魅力でグイグイ引っ張っていって欲しいですね。