どうも!KENT(@kentworld2 )です!
本記事ではWii U(ウィーユー)の歴史を振り返っていきます。
先に触れておきますが、Wii Uは厳しい状況に立たされたゲーム機で、前世代機のWiiから売上を大きく落としてしまいました。
そのためどうしても暗い話になってしまうので、正直に言うとあんまり触れたくなかったりします。
ですが、Wii Uの反省があったからこそSwitchは成功したと思いますので、発売10周年を迎える訳ですし、この機会にイチから振り返ることにしました。
本記事を閲覧することでWii UがなぜWiiからの移行に失敗してしまったのか?
どのようにしてSwitchに繋げていったのかがわかると思いますので、ぜひ、最後までご覧ください。
目次
Wii Uとは?
Wii Uとは、Wiiに続く任天堂の据え置き型ゲーム機で、2012年12月8日に発売されました。
最大の特徴となるのが、タブレット式のコントローラです。
従来のコントローラはボタンとスティックで構成されていましたが、Wii Uはそのうえで携帯型ゲーム機のような液晶画面を追加。
本体から8M以内であればテレビ画面の映像を映せるようにします。
この機能を活用すればテレビをつけずに遊ぶこともできるので、室内限定ではありますが、3DSのような携帯型ゲーム感覚で遊ぶことができました。
本体の性能は前世代機のWiiから大きく向上。
任天堂のゲーム機としては初となるフルHDに対応し、くっきりとした映像を映せるようにします。
なぜ、任天堂はこのようなゲーム機を作ったのでしょうか?
そこには前世代機となるWiiの反省がありました。
Wiiといえばリモコン型のコントローラを採用したゲーム機で、体感操作を特徴としています。
Wiiリモコンをテニスのラケットや剣に見立てて振ったり、拳銃や弓矢に見立てて画面の一点を狙ったり。
直感的に楽しめるゲームが多数発売されました。
その結果、ファミリー層を中心に受け入れられ、全世界で1億台以上。
日本だけでも1,000万台以上を販売するほどの大ヒットを記録します。
しかし、大きな問題点が2つありました。
1つめは、ひとりでじっくり遊べるタイプのゲームが売れにくい市場環境になってしまったことです。
Wiiは確かに大ヒットしましたが、「Wii Sports」などの影響でホームパーティを楽しむためのゲーム機という側面が強くなり過ぎてしまい、多くの家庭ではWiiをリビングに固定していました。
それ故に長時間テレビを占領してしまいがちな1人用の大作ゲームが売れにくい市場になってしまい、ソフトメーカーがWiiソフトの開発を止めてしまう理由の1つになってしまったんですね。
2つめの問題点は、性能が低いことです。
WiiはHD画質に対応しておらず、描写能力も同時期に発売されたゲーム機と比べて劣っていました。
発売直後はHDテレビが普及していなかったのでさほど問題ではありませんでしたが、発売から3~4年が経つと状況が一変。
大幅値下げや地デジ化によってHDテレビが一般の家庭にも普及するようになり、画質の粗さが際立ってしまいます。
また、本体の性能が低いことによって他ハードで発売されている作品を移植するのが難しくなってしまい、新作を出しにくい状況になってしまったんですね。
Wii Uはこれらの問題点を解消すべく開発されました。
さらにWiiの資産を活かすべく、同ハードとの互換機能を搭載。
ゲームソフトはもちろん、Wiiリモコンなども引き続き使えるようにします。
ゲーム以外の機能も満載で、カラオケアプリが標準搭載されていたり、TVチャットをできるようにしたり、TVリモコンとして使うことができたり。
Wii Uは至れり尽くせりなゲーム機でした。
が、色々詰め込みすぎたのが仇となってしまったんですね。
一体、どういうことなのでしょうか?
ここからはWii Uの歴史を西暦順に振り返っていきます。
2011年:大々的に発表
時は遡ること2011年6月。
E3 2011のプレスカンファレンスにてWii Uが初めてお披露目されました。
公開された情報は
- 本体の正式名称
- コントローラが液晶画面付き
- 「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの新作を発表
などがありますが、特に話題となったのが、液晶画面付きのコントローラであるWii Uゲームパッドです。
Wii Uゲームパッドの液晶画面にはテレビに表示された映像を映すことができるので、据え置き型ゲーム機でありながらも携帯型ゲーム機のような感覚で遊ぶことができます。
その点が大きな話題となりましたが、個人的に惹かれたのが、Wii Uゲームパッドを使った新しい遊びの提案です。
Wii Uゲームパッドには
タッチパネル、カメラ、NFC、各種モーションセンサー
が搭載されていまして、Wiiではできなかった遊びを実現できるんですね。
また、TV画面とゲームパッドには別々の画面を映すことが出来るので、対戦プレイをする場合、1人はTV画面を。
もう1人はゲームパッドの画面を見るという、非対称ゲームプレイも可能だったりします。
E3 2011のプレスカンファレンスではこれらの遊びができることをアピールしていたので、ぼくは目を輝かせながら見ていました。
DSやWiiに続いて任天堂がまたしてもゲーム業界に一石を投じようとしている!
なんて思っていたんですが、周りの様子を見てみると不穏な空気が流れていました。
Wii Uを発表した直後の任天堂株は下落。
2006年5月以来となる17,000円を割り込んでしまい、一時は15,770円まで売られてしまいます。
また、ねとらぼ が行った
「E3 2011、MS、SCE、任天堂のカンファレンスどこがよかった?」
というアンケートではライバルのSCEに大差を付けられてしまい、投資家だけではなく、ユーザーからも反応がイマイチであることが露呈してしまいます。
が、同じようなことはWiiが初めて発表された時にもあったので、この時はまだ希望を感じていました。
当時、社長だった岩田聡氏も
Wiiを初めて発表したときの反応と同じだったことを思い出すと、これは決して悪い兆候ではない。逆に新しいことが起きていることの証明だと自信を深めている
と海外メディアのインタビュー で発言。
発売まで着々と準備を進めていきます。
2012年:徐々に広まる不穏な空気
年末商戦に向けて始動
時は流れて2012年。
任天堂はWii Uの情報を段階的に公開していきます。
6月に開催されたE3 2012では本体の最終形態を発表。
対応ソフトも
- 定番2Dアクションゲームシリーズの最新作「NewスーパーマリオブラザーズU」
- ゲームキューブで人気を博したAIアクションゲームシリーズの最新作「ピクミン3」
- Wiiで大ヒットしたフィットネスゲームの新作である「Wii Fit U」
- 任天堂の人気シリーズをテーマにしたゲームを多数収録した「ニンテンドーランド」
- Wii Uゲームパッドを使ったゲームを多数収録した「ゲーム&ワリオ」
などなど、任天堂の圧倒的なブランド力を活かした新作が揃っていることをアピールします。
同年9月に配信されたニンテンドーダイレクトでは発売日が2012年12月8日であることを発表。
さらにWiiで弱かった1人でじっくり遊べるゲームを続々と発表します。
魔女のお姉さんが華麗なアクションを繰り広げる「ベヨネッタ2」
3DSで大ヒットしたハンティングアクションゲームをHD化した「モンスターハンター3G HD Ver.」などなど。
家族でワイワイ遊ぶWiiのイメージとは対象的なゲームも充実していることをアピールします。
そして2012年12月8日、Wii Uは発売されました。
同日には以下の11タイトルを発売。
- New スーパーマリオブラザーズ U
- Nintendo Land
- モンスターハンター3(トライ)G HD Ver.
- ゾンビU
- FIFA13 ワールドクラスサッカー
- Mass Effect 3 特別版
- NINJA GAIDEN 3: Razor’s Edge
- 無双OROCHI2 Hyper
- 鉄拳タッグトーナメント2 Wii U EDITION
- アサシン クリード III
- バットマン:アーカム・シティ アーマードエディション
ラインナップも豪華で、マリオやモンハンを筆頭に、各社の人気タイトルが集結しました。
その結果、Wii Uは発売週に約30万台を販売。
Wiiの37万台には劣りましたが、新発売のゲーム機としては好調なスタートを切ります。
その後もクリスマス需要によって本体の売上はすぐに60万台を突破。
海外でも好調な販売が報じられ、発表時の不穏な空気は解消されたかのように見えました。
様々な問題点が露呈
順調なスタートを切ったかのように見えたWii U。
しかし、様々な問題点が露呈してしまいます。
まず問題になったのが、本体の動作が重いことです。
発売直後のWii U本体は任天堂製品としての水準を満たしておらず、何をする度にあり得ないくらいの待ち時間が発生しました。
HOMEメニューで「カラオケ U」のアプリを起動させたら約33秒も待たされたり、Wiiソフトを遊べる画面に行こうと思ったら約30秒も待たされたり。
従来の任天堂製品は手軽にサクサク動いてくれたので、発売日に買ったぼくは待ち時間の長さに絶望した記憶があります。
また、初回のアップデート時には1時間以上の待ち時間が発生。
その間、ゲームをプレイすることができず、アップデートを終えてからも色々と登録を要求されるなど、非常に面倒な作りとなっています。
その後、アップデートによってある程度は改善されましたが、いずれにしてもWiiと比べてお手軽性に欠けるゲーム機となってしまいました。
テレビを消しても遊べるようにして、本体の性能も上げて、Wiiの資産も活かして、ゲーム以外の機能も充実させる。
それがWii Uの狙いだったのは分かりますが、色々詰め込みすぎてしまったのが仇となってしまったんですね。
2013年:失速の始まり
ソフト不足に
年が明けて2013年。
Wii Uにとっては勝負の年になりますが、上半期は新作を思うように発売できませんでした。
目玉として発売する予定だった任天堂タイトルは続々と延期。
「ゲーム&ワリオ」は2013年初頭から3月28日に。
「ピクミン3」は2012年内から2013年7月13日に。
「Wii Fit U」は2013年春から2014年2月1日まで発売日が延びてしまいました。
また、ソフトメーカーの注目作もほとんど発売されることはなく、「ピクミン3」が発売されるまでの半年間。
販売本数が20万本を超える新作が1本も発売されないという空白期間ができてしまいました。
なぜ、新作を思うように発売できなかったのでしょうか?
要因としては大きく分けて2つあります。
1つめは、任天堂がHDゲームの開発工数を見誤っていたことです。
先程も話したようにWii UはHD出力に対応し、Wiiよりも高画質な映像のゲームを作れるようになりました。
しかし、それに伴い倍近くの開発工数が必要となってしまいます。
任天堂はその辺りを見誤ってしまい、本体発売直後に予定していたタイトルを続々と延期せざるを得なくなってしまったんですね。
もちろん中途半端な状態で出すという選択肢もあったとは思いますが、岩田元社長は
もうひと磨きして出さないとお客様に十分な価値を感じていただけないのではないか
と判断して延期することを決意 します。
新作を思うように発売できなかった2つめの要因は、ソフトメーカーからの支持を得られなかったことです。
スクウェア・エニックス、カプコン、コナミ、バンダイナムコ、コーエーテクモなど、ソフト開発を中心に展開する会社は数多く存在します。
ゲーム機を沢山売るためにはそういったソフトメーカーに新作を作って貰う必要があるんですが、Wii Uの場合、仕様が特殊であるが故にほとんど作ってもらえなかったんですね。
当時の時点でゲームソフトの開発規模は膨れ上がっていたので、ソフトメーカーは収益性を高めるため、同じ内容のゲームを複数の機種で展開する「マルチプラットフォーム」戦略を主としていました。
そのため標準的な仕様のゲーム機を好む傾向にあるので、TVとゲームパッドに異なる映像を映せるWii Uは曲者に見られていたんですね。
任天堂はHDゲームの開発工数を見誤ってしまい、ソフトメーカーは仕様が特殊であることから敬遠してしまう。
こうした理由によって2013年上半期のWii Uは僅か9本しかパッケージタイトルを発売することができませんでした。
それでもヒット作が生まれたら良かったんですが、多くのタイトルが不発。
目玉タイトルであった「New スーパーマリオブラザーズ U」にしても思うように販売本数を伸ばすことができず、半年前に発売された「New スーパーマリオブラザーズ 2」の後塵を拝してしまいます。
その結果、Wii Uの週間販売台数は大幅に失速。
2012年12月4日~12月10日 | 308,000台 |
2012年12月11日~12月17日 | 127,000台 |
2012年12月18日~12月24日 | 123,000台 |
2012年12月25日~12月30日 | 69,000台 |
2012年12月31日~2013年1月6日 | 67,000台 |
2013年1月7日~1月13日 | 21,000台 |
※メディアクリエイト調べ。
3月に入る頃には本体の週間販売台数が1万台を割ってしまい、前世代機であるWiiの販売ペースを大きく下回ってしまいます。
なぜ、Wii Uは発売直後にヒット作を生み出せなかったのでしょうか?
要因としては、Wiiとの違いを上手くアピールできなかったことにあります。
ゲームパッドを使った新しい遊びとか、グラフィックの向上とか。
WiiからWii Uになって変わった点は数多くありますが、ゲーマーはともかく、あまりゲームを遊ばれない方にどこが変わったのかを上手く伝えることができませんでした。
そのためWii UゲームパッドはWiiの周辺機器だと誤解される方もいたりして、新型ゲーム機であるとすらも認知されていなかったんですね。
年末商戦に向けて再始動
スタートダッシュに躓いてしまったWii U。
任天堂は巻き返しを図るべく、2013年下半期から怒涛の攻勢を仕掛けることにします。
新作としては
- 宮本茂さん渾身の一作「ピクミン3」
- ルイージが主人公の2Dアクションゲーム「New スーパールイージ U」
- オープンワールドでミッションを攻略していく「レゴシティアンダーカバー」
を7月に発売。
8月にはプラチナゲームズ開発の「ワンダフルワンオーワン」を。
9月にはゲームキューブの名作をリマスター化した「ゼルダの伝説 風のタクトHD」を発売しました。
10月にはWiiで大ヒットしたパーティゲームの続編「Wii Party U」を発売。
2つの画面を使ったミニゲームを遊べたり、ゲームパッドを挟んで対戦するおもちゃのようなパーティゲームを遊ぶことができました。
そして11月には3Dマリオの新作「スーパーマリオ3Dワールド」を発売。
最大4人同時プレイやWii Uゲームパッドを生かした仕掛け、前作から大幅にパワーアップしたスケール感をアピールします。
このような有力タイトルを投入したのに加え、
- Wii Fit U
- Wii Sports Club
といったWii時代に大ヒットしたタイトルの続編を実験的に展開します。
「Wii Fit U」の場合、発売前にWii U本体とバランスWiiボードを所有したユーザーを対象に1ヶ月先行体験キャンペーンを実施。
発売前から全ての内容を体験できるという、異例のキャンペーンを実施しました。
一方、「Wii Sports Club」は基本プレイ無料タイトルとして展開。
初回起動から24時間は無料体験が可能でしたが、それ以降は課金をすることでプレイできる形式を採用します。
(ただし、2014年7月17日に発売されたパッケージ版は課金なしで楽しめる)
他にも様々なソフトを同梱したお買い得なパッケージを発売したり、「Nintendo Web Framework」という比較的簡単にゲームが作れる仕組みを開発者に向けて提供したり。
Wii Uが広く普及するために様々な施策を行いました。
これらの施策によって止まりかかっていた販売ペースは少しだけ加速しましたが、それでもWii時代には遠く及ばず、2013年末時点での国内累計販売台数は150万台程度に留まってしまいます。
なぜ、有力タイトルを立て続けに発売しても販売が伸びなかったのでしょうか?
大きな要因となったのが、前作との違いを上手くアピールできなかったことにあります。
スーパーマリオ3Dワールド、Wii Party U、Wii Fit U、Wii Sports Club。
いずれもWiiや3DSで発売されている関連作と何が変わったのか?
変わったことでゲームがどう面白くなるのかをパッと伝えることに失敗してしまい、多くの方がWii版や3DS版で満足してしまったんですね。
このようにWii Uは販売台数を伸ばすことができず、苦戦してしまいますが、さらなる追い打ちをかける出来事が発生します。
PS4/Xbox Oneが発売
2013年末。
欧米で他社の次世代機が続々と発売されます。
SCEからはPS4が。マイクロソフトからはXbox Oneが発売。
どちらのゲーム機も性能が非常に高く、前世代機となるPS3やXbox 360はもちろん、Wii Uを凌駕しています。
高性能なゲーム機で盛り上がっている欧米では待望の発売だったようで、PS4・Xbox One共に一瞬で100万台を販売。
1年後にはWii Uの販売台数を超えていきました。
この結果を受けて海外の大手ソフトメーカーはPS4やXbox Oneに注力を始め、Wii Uはマルチタイトルの選択肢から外されてしまいます。
当時の日本はスマホゲームの人気が高く、高性能なゲーム機や海外のゲームにそこまでの需要がなかったので、一見するとあまり関係なさそうに感じます。
しかし、任天堂の売上構成比の7割は海外です。
海外の大手ソフトメーカーがWii Uソフトの開発を辞めてしまうのは大きな打撃となりました。
2014年:キラータイトルで巻き返しを図るも…
年が明けて2014年。
日に日に状況が厳しくなっていたWii Uですが、任天堂から2つのビッグタイトルが発売されました。
まず発売されたのが、「マリオカート8」です。
本作は人気レースゲームシリーズの新作で、重力に逆らってマシンを走らせる「反重力」エリアがコース上に設置されていること。
シリーズ初となるHD画質に対応していることが特徴となってます。
世間では待望の新作だったようで、国内での初週売上はWii U史上最高の32万本を記録。
海外でも好調な販売を記録し、世界で最も売れたWii Uソフトになりました。
続いて発売されたのが「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」。
本作は人気対戦アクションゲームシリーズの新作で、最大8人同時対戦ができること。
シリーズ初となるHD画質に対応していることなどをアピールします。
しかし、3DS版との同時開発であったこと。
3DS版が3ヶ月先行で発売されたことから売上はやや伸び悩んでしまい、シリーズ最低を記録してしまいました。
とは言え高画質な映像でスマブラを遊べること。
「ファイナルファンタジーVII」のクラウドなどが追加コンテンツで配信されたこと。
人気YouTuberに紹介されたことなどから長期的に売れ続け、Wii Uの定番タイトルになります。
マリオカート、スマブラの新作が立て続けに発売された2014年のWii U。
が、この2タイトルを持ってしても流れを変えることはできませんでした。
2015年:思わぬ大ヒット作が誕生
3Dマリオ、スマブラ、マリオカート、Wii Party、Wii Sports、Wii Fit。
強いカードはあらかた出してしまい、もう後がないと思われていたWii U。
任天堂はそんなWii Uの戦略を見直し、ゲームパッドの存在意義を徹底的に高めるソフトの開発を進めていきます。
それまでに発売された作品もWii Uゲームパッドの機能をある程度は活かしていましたが、それはみんなで集まって遊ぶゲームが中心です。
テレビの前に1人でいるとき、ゲームパッドがあるからこそ実現できたソフトタイトルとしては、まだ決定打に欠ける状況でした。
そこで開発されたのが、「スプラトゥーン」です。
本作は4対4で2色のインクを塗り合うアクションシューティングゲームで、チームを組んで制限時間以内にフィールドをインクで塗っていき、塗った面積の広さを競っていきます。
そんな「スプラトゥーン」ですが、Wii Uゲームパッドを活かした作りになっていまして、TVにはキャラクターを操作できるメインの映像を。
ゲームパッドには全体マップを確認できるサブの映像を映す形式を採用しています。
また、ゲームパッドの画面をタッチすることで大ジャンプできる機能を搭載。
2画面だけではなく、タッチスクリーンも活かした設計にしていきます。
そのためTV画面とゲームパッドの画面を交互に見ながらインクを塗っていくという新感覚の遊びが生まれ、Wii Uゲームパッドの価値を高めることに成功しました。
また、撃ち合いをしなくてもチームに貢献できるゲームシステム、親しみやすいキャラクターデザイン、積極的なアップデート、人気YouTuberの紹介によって新規層の獲得に成功。
マリオやピカチュウが登場しない全くの新規タイトルであるにも関わらず、日本国内で最も売れたWii Uソフトになりました。
続いて発売されたのが、「スーパーマリオメーカー」です。
本作は2Dマリオのコースを作成できるクリエイトゲームで、タッチペンを使った直感的な操作システムを採用しています。
また、オンラインに接続することで作ったコースをアップデート・ダウンロードできる機能を搭載。
世界中のユーザーとオリジナルコースを共有できるようになりました。
このようなクリエイトゲームは数多く存在しますが、本作は世界的に有名な「スーパーマリオブラザーズ」のコースを作れるゲームです。
誰もが知っているゲームのコースを作成し、全世界に公開できることに多くの人が魅力を感じていました。
動画サイトとの相性も抜群で、YouTube・ニコニコ動画では実況動画が多数投稿。
特にニコニコ動画ではランキング上位を「スーパーマリオメーカー」の動画が埋め尽くすという異例の事態となりました。
これが大きな宣伝効果となり、国内だけで100万本を超える大ヒットを記録します。
スプラトゥーン、スーパーマリオメーカー。
どちらのタイトルもゲームパッドの機能を活かし、オンラインで遊ぶことを前提に作られた、Wii Uならではのタイトルです。
その点がWii Uを持っていない人にも伝わったようで、本体と一緒に買われる方も多く見られました。
その結果、2015年の売上は前年超えを果たします。
2016年:市場規模が縮小
「スプラトゥーン」や「スーパーマリオメーカー」によって勢いに乗ったWii U。
2016年には同ハード最大の目玉タイトルである「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」が発売予定となっていました。
同作はオープンワールドの世界を冒険していくアクションアドベンチャーゲームで、「ゼルダのアタリマエ」を見直すことを開発コンセプトにしています。
従来の作品では順番に攻略していく必要があったダンジョンを好きな順番から攻略できたり、スキップできたり。
シリーズの構造を変えたことで圧倒的な自由度を実現していきます。
しかし、開発者が満足する水準に達しておらず、「ゼルダの伝説」が生誕30周年を迎える2016年に発売できるのかも怪しい状況でした。
また、2016年に入る頃にはWii Uの市場規模がさらに縮小。
発売タイトルは前年から半減してしまい、任天堂が新作を発売しても不発に終わるケースが増えてしまいます。
プラチナゲームズと共同開発した「スターフォックス ゼロ」の国内売上は約5万本。
ペラペラのマリオが活躍する「ペーパーマリオ カラースプラッシュ」の国内売上は約6万本。
マリオたちがテニスで競う「マリオテニス ウルトラスマッシュ」の国内売上は約15万本などなど。
各タイトルが持つ潜在的な需要を引き出すことができず、3DSやWiiで発売された関連作から売上を大幅に落としてしまいます。
さらにWii Uのカスタムチップを製造していたルネサス工場の閉鎖が決定。
Wii Uの製造を終了せざるを得なくなりました。
こうした状況を受けて任天堂は方針転換。
Wii Uソフトの供給を止めて、同ハードの資産を他ハードで活かすことにします。
「スーパーマリオメーカー」や「ヨッシーウールワールド」は3DS向けに移植。
コーエーテクモが販売・開発を手掛けた「ゼルダ無双」も3DS向けに移植することにしました。
そして2017年。
任天堂はWii Uの資産を別の形で活かすことにします。
2017年:Switchへバトンタッチ
2017年3月3日。
任天堂の新型ゲーム機、ニンテンドースイッチが発売されました。
同ハードは任天堂が販売した歴代ゲーム機の遺伝子を継承した集大成とも呼べるゲーム機で、Wii Uで問題だった点も徹底的に改善。
本体から8M以内でしか携帯ゲーム機として利用できない点、動作が遅い点、ソフト開発が難しい点を改善することに成功します。
任天堂はそんなSwitchの目玉タイトルとして「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」を本体と同日に発売することにしました。
同作は当初、Wii U専用ソフトとして2015年内に完成する予定したが、「最も完成度の高い究極のゼルダ」を目指すために延期を決行。
それに合わせてWii U版に加えてSwitch版も発売することにします。
すると、歴史に残る名作と各地で絶賛され、Switchのスタートダッシュに貢献しました。
任天堂はその後も
- マリオカート8 デラックス
- ベヨネッタ2
- ドンキーコング トロピカルフリーズ
など、Wii Uの人気タイトルをSwitch向けに続々と移植。
どのタイトルもWii U版を大きく上回る販売を記録して、特に「マリオカート8 デラックス」は2022年6月末時点で626万本。
全世界累計に至っては4,682万本というマリオの関連作では最大のヒット作となり、ゲーム機の発売初期に起こりがちなソフト不足を解消することに成功します。
また、Wii Uソフトの開発ノウハウを活かすことで
- スプラトゥーン2
- ゼノブレイド2
- マリオテニス エース
といった新作を初期に投入することにも成功。
特に「スプラトゥーン2」は前作で見られた潜在的な需要を掘り起こし、Switchの人気を決定付けます。
全体のまとめ
ここまでWii Uの歴史を振り返っていきました。
正直、Wii Uはゲーム機として見ると中途半端な作りです。
Wiiとの互換性があるのは良いけど、Wiiリモコンは別売り。
ゲームパッドによってテレビを点けずにプレイできるようになったのは良いけど、本体から8m以上離れてのプレイは不可能。
任天堂の製品としては読み込み速度が遅く、快適性もイマイチ。
全方面に向けた最強のゲーム機になるハズがコンセプトが定まっておらず、八方美人になってしまい、魅力をうまく伝えることができませんでした。
販売台数も低調で、最終的な売上は国内334万台。
全世界1,356万台と任天堂の据え置き型ゲーム機としては過去最低を更新してしまいました。
ですが、Wii UがあったからこそSwitchの大ヒットに繋がったと思うんですよね。
Wii Uのソフト開発が遅れていた頃、岩田元社長は
もうひと磨きして出さないとお客様に十分な価値を感じていただけないのではないか
と判断して延期することを決意しました。
そういった開発方針がソフトの完成度を高め、その資産をSwitchで活かせたのですから、失敗の一言で片付けるのは勿体なく感じます。
スプラトゥーン2、ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、マリオカート8 デラックス、大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL、スーパーマリオメーカー2。
いずれもSwitchを代表とするタイトルですが、実は、Wii Uの資産を活かして作られているんですよね。
そう考えるとWii Uって実は凄いゲーム機ではないでしょうか?
ぼくの場合、Wii Uはレトロゲーム専用機として活用しています。
実はWii Uではレトロゲームの配信が充実していまして、Switchでは遊ぶことができない懐かしのタイトルをダウンロードできるんですよね。
残念ながら2023年3月をもって購入できなくなってしまいますが、購入したタイトルは半永久的に遊ぶことができますから、今後も大切にしていきたいと思います。
おまけ:Wii Uこぼれ話
Miiverse
任天堂はWii U立ち上げと同時にMiiverse(ミーバース)というネットワークサービスを展開していました。
簡単に言うと、Twitterにお絵かき機能を加えたような感じです。
Wii Uゲームパッドのタッチ機能を使って様々なイラストを投稿できるのが大きな特徴でした。
アイコンはMiiに固定。
お絵かき機能と相まってアットホームな雰囲気が初期の頃にはありました。
が、ユーザーが増加するにつれて民度が低下。
任天堂の運営側も対処が追い付かず手間取ってしまいます。
そんなMiiverseですが、「スプラトゥーン」発売直後は一定の盛り上がりを見せました。
というのも本作のロビー画面ではMiiverseによるイラストなどを投稿することができたからです。
任天堂の岩田前社長がお亡くなりになられた直後、「スプラトゥーン」のロビー画面では彼の追悼イラストが多数投稿されたのはよく覚えています。
意外と多い大人向けのゲーム
任天堂といえばファミリー・子供向けのイメージが根強いですが、Wii Uはそんなイメージとは裏腹に大人向けのゲームが多かったりします。
大きな要因となったのが、欧米のゲームメーカーが他機種とのマルチタイトルを多数展開したことです。
「アサシン クリード」「コールオブデューティ」など、それまで任天堂ハードとは繋がりが弱かったシリーズが次から次へと展開されたのは印象に残っています。
デビルメイクライとNINJA GAIDENのクリエイターが任天堂とタッグを組む!?
デビルメイクライ、NINJA GAIDEN。
これらのタイトルは戦闘重視の3Dアクションゲームとして高い人気を誇ります。
なんと、Wii Uではこれらのタイトルを生み出したクリエイターの新作が揃って展開されたんです。
「デビルメイクライ」を生み出した神谷英樹さんは「ベヨネッタ2」「The Wonderful 101」をWii U向けに展開。
「NINJA GAIDEN」を生み出した板垣伴信さんは「デビルズサード」をWii U向けに展開。
その多くはWii Uのイメージとは一線を画するコアなアクションゲームで、一部のゲームユーザーから注目を集めました。
カルト的な人気を博すゲームも誕生!


「Wii Uで好きなタイトルは何になりますか?」
そんなアンケートを実施した場合、高確率で上位ランクインすると思われるのが「幻影異聞録♯FE」と「ゼノブレイドクロス」です。
いずれの作品もニッチではありますが、一部ではカルト的な人気を博しています。
「幻影異聞録♯FE」は「ファイアーエムブレム」と「真・女神転生」のコラボレーションタイトル。
「ファイアーエムブレム」を題材にしながらも「真・女神転生」や「ペルソナ」のゲームシステムを取り入れており、異色のコラボを果たしました。
「ゼノブレイドクロス」は「ゼノブレイド」の流れを汲むオープンワールドRPG。
なんですが、主人公がアバター制となり、BGMやグラフィックなど作風も変化してしまいます。
その影響で前作のノリを求めていたら肩透かしを食うんですが、妙に中毒性が高いゲームだったんですよ。
それもあって一部では未だに高い人気を誇ります。
本記事の動画版
結局ソフトが出なかったのが致命的でしたね やりたくても新作が出ないんじゃやりようもないし ようやく出てもマリオ系でウンザリ
その点PS4は毎週ソフトが出て積みゲーだらけです(笑)
その差が今の結果ですよね